さかなのゆめ

国道十号線沿いをおよぐ午前六時
さびついた珊瑚の隙間をまっすぐ
目的は無く
ゆくさきの当てなく
ただ生きるために尾びれがひらめく


さかなはすすむ
朝日のさして
アルコールがとろけるような薄ら氷
ゆうべの戯れが背骨にかじかむ
滞留
青色の美しい白身になりたかった
柔らかく群れにまぎれていたかった
気持ち
ひみつ


全身をくねらせて
ひらひらとすすむ
潮は速く
押されるように
さかなは老衰では、死なない
生き尽くして動けなくなったとき
あなたに食べられたい


ほんとうは
まぶたを下ろして口を閉じ
夢を見て眠ることだってできる
水面のへり銀色に飛び出し
宇宙へぷかぷかのぼっていける
でも
教えてあげない


(2019.4.24)

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